積み重なるタイムライン

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ふと思う。この1年3ヶ月もの間、彼以外の人の誰かと会話したか? 分からない、もしかして、視界に入れることすら… 『君を殺めた僕のタクティクス99』は平積み売れ筋の本の上にぞんざいに投げられ、パサッという小さな音がした。その音に、まとまった数のMS明朝がカラカラッ…とまた崩れ堕ちた。 物音すら知覚していなかった自分に、今更ながら唖然とする。 「長い時間引き止めるつもりもない。最後の最後で筋書きがオシャカになるなんて嫌だね。もう帰れ。死ぬなら本当に死んでくれ。」 「わ…私のこと、好きって言ったのは?」 「タクティクス44。」 「ひどい!」 「それはこっちの台詞だ。肉体から離脱した悪気のない狂気、それが君の名札。 取り憑かれた僕の1年3ヶ月はまさに酷い毎日だったよ。眠れない、働けない、食えない、独りヤケになって怒鳴りちらせば通報される、 でもこれで終わらせてくれ。 この後本屋の前の通りに出ると、動転した君は通行人たちにぶつかりながらフラフラ歩く。もちろんよろめくのは君だけ。すると故障したドローンが真上から墜落してくる。惨事にならずに済む理由はね、君の頭上を狙って落とすから。ところが君の頭を砕くはずの機械の塊にも、全く痛くない。不思議に思い、すくっと立ち上がるんだ。でも周りの人間は壊れたドローンのことだけを騒いでいる。 何故か? さあ、死んだことを自覚しに行けよ。早くっ!」 ずっと片思いだった。 ずっとずっとずっとずっとずっと心残りで、一片の好意でいいから欲しかった。 好きと言われたら今度はずっとずっとずっとずっとずっと離れたくなくなって 「生きてるうちに口も聞いたことすらない君、自死なんだって?肉片がバラバラに飛び散ったそうじゃない? でもさ。君は誰?知らないよ、なんで僕なんだよ?なんでつきまとうんだ?何か悪いことした?盛り塩もお祓いもお経も効かないのはさ、狂った君の魂なんて、よっぽど横書きで刻まれてんだろな!携帯ばっか弄ってるから! これで完全に死ね!消えろ!もう二度と出てくんなよっ!」
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