女絵

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ざっざっざと、駆け寄ってくる草履の音がした。 「ご両人! 先ほどは捜査にご協力いただき、ありがとうございました!」 声をかけてきたのは、さっきの与力だった。 「何だい。 あんたまた戻って来たのかい? とっとと下手人を市中引き回しの刑にしちまえばいいのに」 振り向いた茅野が、蔵之介を見て突っかかる。 「それが実は、今しがた、その男を取り調べていたところ、妙な言い訳をはじめたのですよ」 「言い訳?」 「そうです。 〝俺ははめられたんだ。 濡れ衣だよ。 あの風呂敷は、今朝方、店に運び込まれた荷物に混ざっていただけで、見たこともない〟 かようなことを言い出して……」 「店? 荷物? 何のことだい?」
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