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戦況を見て、力尽きたようにがくり。 肩を落とし、地面に膝を付く永興。
「今ここで殺しはしませんよ。
あなたには自分の行いに対する責任があります。
真相を全て話し、お上の裁きを受けてください」
足元の土に顔をこすりつけ、土下座状態だった永興を眺めおろし、やんわり穏やかな口調で蔵之介は告げる。
それから懐紙で刀の血を拭い、鞘に納めた。
瞬間、永興が突然、蔵之介の両足に飛びつき、地面に引きずり倒す。
そうして腹の上に馬乗りになった状態で、手にした小刀を蔵之介の頭上で振りかざした。
同時に、ぶすり!
永興の太ももに突き刺さったのは、二階から投げつけられた、かんざしの先。
……月明かりに鋭く光る、金色の。
ぎゃぁぁぁぁぁ!
壮絶な悲鳴をあげ、その場に崩れ落ちる永興の体。
呆気にとられた蔵之介が二階の窓を見あげると、月雲が框に頬杖をつき、にやりと口元を歪めている。
隣には、怒りにうち震える茅野。
「ちょっと、お月さん! やめとくれよ!
いくらすると思ってるんだい? あたしのあの、かんざし!」
…………………
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