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「あぁ? ちょっとあんたひねくれすぎじゃないか?
悪いけど、長いことこんな商売させてもらってればね。
病や犯罪で死んでいく人間なんて、ごまんといるんだよ!
私が生きながらえてるのだって、一かばちか、運のようなものさ。
だけどあんたは今、亡霊じゃない。 生身の人間だ。
だったら小花の……あの娘のぶんまで、気張って生きてかなきゃならないんじゃないの?」
茅野の陰から、おそるおそる顔をのぞかせた蔵之介も加勢する。
「そうですよ。
小花さんだってあなたの成功を信じて、応援していたんでしょ?
彼女の無念を思うからこそ、彼女の信じた道を突き進むのが、男ってもんだと思いますよ?」
「ちっ……なんで急に男の気概を語ってんだよ。
女みたいな顔してやがるくせに」
毒づく月雲の額をぴしりと叩く茅野。
「なんだい!
女みたいな、なよなよしい泣き言いってるのは、あんたのほうだろ?
蔵の坊ちゃんは、案外いざという時、頼りになるいい男なんだよ!」
「え……」
突然の褒め言葉に、戸惑いが隠せない様子の蔵之介。
「い、いや、違うんです。
自分も剣術修行はつらいけど大切だなって、この前の騒動でも思い直してたところで。
稽古して相手に勝てた時は、やっぱり嬉しいですしね。
だからあなたも、好きなことなら目いっぱい精進するべきだと言いたい。
まあ、絵は、たぶん買わないと思いますけど……」
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