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「あはは、そりゃそうだ。やめときな。
持って帰ったら、母上様に叱られちまうよ」
茅野の冷やかしに、蔵之介が顔を赤らめた。
「ちょっと! ばかにしないでください!」
「あらあら。 真っ赤になっちゃって可愛いね。
叱られついでに、筆おろししていくかい?
あたしはかまわないよ。 ほらおいで?」
「はぁぁぁぁ?!
何言ってるんですか! 触らないでください」
そうだった。よく考えたらまずい。ここは茅野の部屋だ。
そう気づいた瞬間、逃げ腰になる蔵之介。
一刻も早く外に出なければ!
「ちょうど、そこに変態絵師さんもいることだしねぇ。
記念にちょいと描いてもらえばいいじゃないか」
「嫌ですよ! 絶対! 離して。 帰ります!」
笑って袖をつかんでくる茅野を振り払おうと、蔵之介はもがいて暴れる。
月雲が呆れ顔をして、そんな二人を眺めていた。
「だからお待ちって!
ほらほら、絵師さん!
あたしのことは、ちゃんと一寸も違わずに、若く美しい姿で描くんだよ」
「……無理いうな」
【完】
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