偽装の心理 2

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「しかし、毛髪は女性のものしか見つかっていないとすると、   その指紋も女のものであると考えるのが自然だな」 『推理は鳴海さんに任せます』 「そうだな。それはオレの仕事だ」 今度は鳴海の方が、自嘲気味な笑みを浮かべる番だった。 「第一発見者は、同マンション1階の『龍来軒りゅうらいけん』の主人の妻、  市来静江いちきしずえ52歳。食事を差し入れに訪問したところ、  衣澤康祐の遺体を発見。当時、玄関に施錠はされていなかった。  ドアノブからは、複数の指紋を採取―――か」 報告書の束を捲めくっていた鳴海の手が、『遺留品』のページに止まった。
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