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一日取材をして最後に入ってお店で早めの夕食を頂くことにした。
「私お刺身御膳にしよう。山村さんは?」
「えーと…すみません、決めるの遅くて」
「ふふ、山村さんはすみませんが口癖ですね」
「うるさかったですか?すみま…あ、また」
話していくと山村さんは私より1つ年上。カメラを始めたのは中学生のときで、彼曰く不器用でカメラを頑張ると成績が落ちて、成績がいい時は納得する写真が撮れなかったと。思わず笑ってしまうエピソード。
「丸井さんは海が嫌いなんですか?」
「えー?突然なに言ってるんです?」
平然を装いお茶をすする。でも心臓はドキドキを通り越している。湯呑を落とさないか心配。
「取材は楽しそうなのに僕が海にレンズを向けるとなるべく見ないようにしていたから」
「…そんなにバレバレだったのか…」
湯呑を置いて盛大な溜息を吐く。隠そうとすれば隠せること。言わないでいいこと。ただ山村さんを見ると真っ直ぐに私をとらえている。なんだろう、この目は優しく話を聞いてくれる。そういう人の目をしていた。
「大学1年の時サークル仲間とバーベキューしに海に言ったんです。そうしたらそこそこイケメンな先輩が付き合わないか、て」
「へえ。告白されたんですね」
「私もこんなカッコいい先輩ならいいなー、て若かったから即オッケーしたんです。そうしたら」
『よっしゃー!OK言わせたぞ!ほら、賭けた奴金寄こせよ!』
そのイケメン先輩が告白してOK言わせることができるか、それを賭けにしていた。私を選んだ理由は適当にそこに立っていたから、とかなんとか…。
「乙女心が傷つきましたね。でも、これだけじゃないんですよ」
2年の時は仲の良い男女グループで海に遊びに行った。2年と言えば20歳になりお酒解禁。ただ私はお酒のおいしさが分からず乾杯のビールだけ付き合った。それでも他の子は酔っぱらうまでお酒を楽しんでいた。そしてすっかり酔っぱらった男友達が絡んできて、適当に相槌を打っていたら手を引っ張られ人気のない場所に連れていかれた。マズい、と思ったときには手遅れ。キスはされるし、体は触られるし、抵抗しても男女の力の差で勝てなかった。
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