1人が本棚に入れています
本棚に追加
山村さんはハンカチを渡してくれてそれでまだ流れる涙を拭いた。胸がドキドキする。それは景色に?
それとも…目の前にいる彼に?
「丸井さんさえよければ、また見に来ませんか?僕、綺麗な景色はたくさん知ってます。カメラマンですから」
「ええ、よろしくお願いします」
山村さんがそっと私の頬につたう涙をぬぐってくれた。
心が今日一番ドキッとする。山村さんは優しく微笑んでくれている。
そして一歩近づいてきたから距離は…かなり近い。
恥ずかしくて視線を逸らすと顔が近づいてきた。
「これからしっかり僕を見てもらえますか?」
「…私のことも、しっかり見てくれるんですか…?」
「もちろんです」
その言葉を聞き、私は目を閉じた。海斗さんなら、信頼できる。
「ああ!」
突然海斗さんが声を上げた。なんだろう、と目を開ける。
「すみません!さっきのお店、会計してないから無銭飲食になってしまいます!」
さっきまでのいい雰囲気を彼自ら壊した。でも私には怒りの感情はない。むしろ笑ってしまった。
すっかり太陽は海に沈んでいたけど、また明日になれば太陽はのぼる。綺麗な世界が広がる。
私はこの人といくつ綺麗な景色を見ることができるのか。
出会わせてくれた海の神様、教えてくれますか?
最初のコメントを投稿しよう!