トラウマ

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山村さんはハンカチを渡してくれてそれでまだ流れる涙を拭いた。胸がドキドキする。それは景色に? それとも…目の前にいる彼に? 「丸井さんさえよければ、また見に来ませんか?僕、綺麗な景色はたくさん知ってます。カメラマンですから」 「ええ、よろしくお願いします」 山村さんがそっと私の頬につたう涙をぬぐってくれた。 心が今日一番ドキッとする。山村さんは優しく微笑んでくれている。 そして一歩近づいてきたから距離は…かなり近い。 恥ずかしくて視線を逸らすと顔が近づいてきた。 「これからしっかり僕を見てもらえますか?」 「…私のことも、しっかり見てくれるんですか…?」 「もちろんです」 その言葉を聞き、私は目を閉じた。海斗さんなら、信頼できる。 「ああ!」 突然海斗さんが声を上げた。なんだろう、と目を開ける。 「すみません!さっきのお店、会計してないから無銭飲食になってしまいます!」 さっきまでのいい雰囲気を彼自ら壊した。でも私には怒りの感情はない。むしろ笑ってしまった。 すっかり太陽は海に沈んでいたけど、また明日になれば太陽はのぼる。綺麗な世界が広がる。 私はこの人といくつ綺麗な景色を見ることができるのか。 出会わせてくれた海の神様、教えてくれますか?
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