かわいそうなんかじゃないよ。

4/10

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
   そっか、みんなはお父さんからもお年玉もらえるんだ。  パパは今頃、どこで何をしてるのかなあ。  ちゃんと風邪ひかないようにマフラーに手袋、してるかなあ。  昨年いなくなったきり、一度も家に帰って来ていないパパのことを考える。  一方で、突然黙り込んだ私を気に留める子は特におらず、私の話題は一瞬で終わり、みんなは誰にお年玉をもらったかという話が続いていく。  そして本当の驚愕は、この後に待っていた。 「俺は、おじいちゃん二人と、おばあちゃん二人からもらった!」  やんちゃ坊主のヒロくんのその言葉に、私の思考が停止した。  『二人』って……どういうこと? 「えーいいなあ」 「私はおばあちゃんには、二人からもらったよ」 「俺はおじいちゃんだなー」  みんなの話題が変わらないうちに、戸惑いながらも私はその疑問を口にした。 「えっ、あのさ……ふたり、いるの?」  私のこの一言にみんなが一斉におしゃべりを止め、私の方に注目した。  両手じゃ数えきれないそこら中の瞳が全部、不思議そうにこちらを見ていた。 「何が?」  クラスのリーダー、カヨちゃんが怪訝そうな顔をしながら、みんなを代表して訊いてくる。  私はその問いに答えるべく、意を決して口を開いた。 「……おばあちゃんと、おじいちゃん」  するとカヨちゃんは目をまんまるにして、それからあっさりと回答を口にしてくれた。 「うん、そうだよ」  それを皮切りに、再びみんなが口々に喋り出す。 「俺はおじいちゃんだけ二人で、おばあちゃんは一人だけど」 「あ、うちもうちもー!」 「そ、そうなの?」 「ねえねえ、ハルちゃんは? どっちも二人いる?」 「え、いや、一人しかいないけど……」 「そうなんだー」  何かが、おかしい。  私はそう感じていた。  おばあちゃんやおじいちゃんって、二人ずついるものなの?  お母さんやお父さんはみんな一人ずつなのに、なんでおばあちゃんやおじいちゃんだけ、みんな二人いたり一人いたりするんだろう?  そのときの私にとってその事実は本当に不思議で仕方なかった。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加