かわいそうなんかじゃないよ。

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   そのすぐ後に先生が教室へやって来て、一か所に集まっていたみんなは蜘蛛の子を散らすように自分の座席へと戻っていった。  その波に乗りながら、そして席に座った後も、私は一人もんもんとこの謎について考えていた。 ――そもそも、おばあちゃんって何だろう?  私のおばあちゃんについて、お母さんが言っていたことを思い出す。 「おばあちゃんはね、お母さんのお母さんなんだよ」  そして――ああ、そういうことか、と私はようやく合点がいった。  お母さんのお母さんがおばあちゃん。  お母さんのお父さんがおじいちゃん。  と、いうことは。  みんなはお父さんにも同じようにお母さんとお父さんがいる。  だからその人たちが、もう一人のおばあちゃんとおじいちゃんなんだ。  分かってしまえば単純なことなのだけれど、当時の私にはその事実は本当に驚きでしかった。  それ故に私は、ぐんっといっぺんに世界が広がったような、それでいてその世界を私は一人外側から眺めているような、何とも言えない複雑な気持ちになった。 ――パパのお母さんとお父さんは、元気にしているのかな。  約1年前、5歳のときに突然姿を消したパパ。  私の中のパパの記憶は、驚くほど少ない。  そしてパパのお母さんとお父さんという存在に、おそらく私は会ったことがなかった。  だから私はこんな単純なことにすぐには気づくことができなかったのだ。  その日、授業中も休み時間も私はずっと上の空だった。  楽しみにしていたはずの久しぶりの学校は、なんだかふわふわとしたまま気付けば終わってしまっていた。  
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