1人が本棚に入れています
本棚に追加
「おばあちゃんとおじいちゃんが、二人ずついるっていう子がいてね。
初めはなんで二人いるのか分からなかったんだけど」
「うん」
先を促すようにお母さんが相槌を打ってくれる。
「それでね。そっか、パパの分だって気づいたの……パパにもね、お母さんとお父さんがいるんだあって」
お母さんは私のことを優しくじっと見つめている。
「だからね、パパのお母さんとお父さん、元気にしてるのかなあと思って……お母さんの、お母さんとお父さんみたいに」
お母さんは、何も言わなかった。
私の目をじっと、じっと見つめるお母さん。
その瞳に映る私がゆらゆらと揺れているのに、私は気づいてしまった。
「……お母さ、」
何か言わなければとする私を遮るように、私の視界はベージュ色に覆われた。
お母さんの着ているセーターの色だ。
私は、お母さんの腕の中にすっぽりと収まっていた。
いつもは「食事中に立ち上がっちゃダメ」と言うお母さんが、自分からその決まりを破って私の隣にやって来ていたのだ。
「……ごめんね」
頭の上からぼそりと聞こえてくる、お母さんの声。
お母さんの胸に顔を埋めると、私の大好きなお母さんの匂いがした。
最初のコメントを投稿しよう!