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「どうして謝るの?」
お母さんに包まれたまま尋ねる。
お母さんをすぐそばに感じて、私はすごく安心した。
「……お母さんね、パパのお母さんとお父さんのこと、よく知らないの……パパはね、自分にはお母さんもお父さんもいないって言ってたんだけどね」
「パパには、お母さんもお父さんもいないの?」
「そうかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない」
「そうなんだ」
私には正直、お母さんの言っていることはよく分からなかった。
分からないながらも。
それでも、どうしても一つだけ、私には聞きたいことがあった。
「――お母さんとお父さんがいないパパは、かわいそう?」
お母さんの胸から顔を上げて、目を見つめる。
私を抱きしめるお母さんの腕にぎゅっと力がこもった。
「かわいそうじゃない――かわいそうなんかじゃないよ」
一音一音、大切に大切に、お母さんがそう伝えてくれる。
「……ほんとうに?」
「ほんとうだよ」
尋ね返す私の頭にお母さんの手が乗せられ、そのままお母さんの胸に引き寄せられる。
セーターに顔が埋もれて少し息苦しかったけど、温かくて安心した。
「なら、よかった」
お母さんがしてくれているみたいに、私もお母さんの背中にそっと手を回して、それから力いっぱい抱きしめた。
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