101号室 土曜の朝

2/8
前へ
/10ページ
次へ
 汗でべたついたシャツが体にまとわりついて、その不快さにより嫌が応でも朝の現実に引き摺りこまれつつある。  もう一度眠りに落ちる可能性を完全に排除しないため、目を開かないよう気を付けながら、うつ伏せの状態を維持しつつベッドの下に右手を伸ばして無造作に動かす。  ようやく手に取った携帯を薄目を開けて確認すると時刻はもう11時を回っている。土曜の朝。  締め切った窓の外からは、通りを挟んで向かいにある印刷会社の操業音や従業員の男たちの声が賑やかに聞こえてくる。  二日酔いの頭で睡眠時間を計算する。だいたい朝の5時くらいに寝付いたことを考えれば、既に6時間は寝た計算だ。  これはもう十分寝たなと結論づけ、目を開けることにした。光太は昔から感性よりも論理で動く性質で、眠いか眠くないかよりも事実として何時間寝たかの方がよっぽど重要なことだと思っている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加