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折られた枝の跡を逆に辿って半時間ほど歩くと、昨日と同じように水の流れる沢の音が聞こえてきた。雑木林の斜面から首の伸ばして覗き込んでみると、そこには陽光に照らされた渓流の姿が見えた。
「黄金沢……」
垂れ下がる蔓をつたって斜面を降りる。昨日と同じように、渓流には透明な水が絶え間なく流れ続けていた。
昨日寝転がって時を過ごした大きな一枚岩を見つけ、再びその上に腰をおろす。大きく息をついて辺りを見渡すと、不思議と落ち着いた気分になっていく。
沢を覆う木々の合間から降り注ぐ、眩い木漏れ日。静かに響く渓流の音。舞い落ちる枯葉が水流に吸い込まれていく風景。
どれも、昨日私が目にしたのと全く変わっていない。
立ち上がり、ゆっくりと沢岸に降りる。昨日と同じように渓流に近づき、冷たい水に手を浸した。それから汗ばんだ顔を洗い、沢に直に口を付けて水を飲んだ。
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