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カーテンの隙間から射し込む眩い陽光で、目を覚ました。
昨日の疲れもあり、私は泥のように眠っていたようだ。窓から一目見ただけで、もうかなり日が高くなっているのに気付く。枕元に置いていた腕時計を手にすると、その針はすでに八時を過ぎていた。
「……あれ?」
慣れない山歩きのせいでぎしぎしと軋む体を起こして、布団から抜け出す。
(確か、六時には起こすって言っていたが……)
部屋の仕切りとなるガラス戸を開けて廊下を見渡してみたが、人の気配は無かった。営林所の中も閑散として人影が無かったため、私は女とその祖父が住むという隣の管理人宅へと向かう。
だが、その建物にも鍵が掛けられていた。
「おかしいな」
昨日の夜は暗くてよく分からなかったが、今見ると管理人宅の窓にカーテンは掛かっておらず、家の中が丸見えだった。中を覗き込んでも、古びた家具が散在しているだけで生活用品が何も置かれていない。蛍光灯が外されているところから見ても、この家屋には人の住んでいる気配が全くなかった。
裏口に回り込んでみるが、やはり鍵が掛かっていた。南京錠の錆び具合から見ても、ほとんど使われていないのは明らかだった。
(……どういうことだ?)
赤茶けた南京錠をがちゃがちゃと鳴らし、私は茫然と立ち竦む。
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