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翌日もその次の日も、私は変わらず彼のいる本屋へと出向き、気に入った少女漫画を買い、彼と何の気ない話をして去って行く。三日目には、漫画を描いていると素直に事情を話し、彼に参考写真まで撮らせていただいた。
この漫画みたいな夢のようなトキメキストーリーは無いけれど、今、私はとても充実している。
四日目、短編漫画の清書が終わり、残りはトーン貼りだけとなった。もはや彼の店に出向く理由は無いけれど、打ち明けた際に言われてしまったのだ。
「出来たら是非見せて欲しい」
と。
恥ずかしい感情もあったが、同じ少女漫画好きとして、そして今まで協力してもらったお礼として、漫画を持って来店した。
「はい!」
お辞儀して原稿のコピーを持った両手を伸ばす。
「有難う」
彼は受け取ると、真剣な表情で原稿に目を通す。そして、「はい」と、私に原稿を返す。
「凄い! 凄いよこれ、きっとヒットするよ!!」
「そ、そうだと良いけど……」
「……こんな恋、俺もしてみたいと思った」
「出来ると良いね!」
「君と」
私は口をへの字にし、目を見開く。彼は眉を下げ、にっこりと笑った。
「……無理かな?」
彼の不安そうな顔。対して私は表情を厳しいものに変えて言った。
「私、見た目で判断する人嫌いなの」
「……そうか、そうだよね。ごめん」
「でも、この漫画を理解して尚言ってくれてるなら、それは凄く嬉しいし、私もそんな人と恋をしたい」
「それって……」
私はにっこりと笑って頷いた。
「付き合って下さい」
「はい! 是非!!」
彼は、私の手を掴んで言った。
何だか、出会った当初とは逆転してしまった二人に、私達は笑ってしまった。
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