第4話『絶対に好きにならない』

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背中に宗助の存在を感じながら、無言で家まで歩き続けた。 アパートの階段を上ったところで…… 「食事でもどうだ」 宗助がそう、私の背中に投げかける。 「結構です」 そう、短く返して自分の部屋へ駆けていきドアを勢いよく閉めた。 その瞬間、何かの糸がプツンと切れてその場にズルズルと崩れ落ちた。 さっきの宗助の言葉が何度も何度も頭の中に流れる。 『絶対に俺を好きにさせてやる』 どこから湧いてくるんだか、その自信……。 肘と肘の間に顔をうずめ、さらにギュッと自分を抱きしめた。 胸が、全力疾走したときみたいにトクトクと脈打って、顔全体が熱くなる。 「好きになんて……なるわけない」 第一、 タイプじゃない。確かにイケメンだけど、あんな自分勝手でポンコツな人……。 でも……なんかほっとけなくて、無邪気な笑い顔がかわいくて……。 「好きになんてなるわけないよね……?」 もう一度口をついてでた言葉は、なぜだか疑問形だった。 こんな、何の接点もない、住む世界の違う私を……本気で? やっぱり宗助はなんにもわかってなくて、勢いだけで言ってるんだろうか。 わからない。 わからないけど……なぜだか、嫌な気持ちはしていなかった。 「だーっ!! もう! 考えるのやめ!」 立ち上がり、靴をぬいで部屋に上がった。 とにかく、普通に。今まで通りに過ごそう。忘れよう。今日あったこと全部! ――と、思っていたけど。
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