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時が過ぎ……17時。
またリムジンが来ていたら……なんて考えて、本当にビクビクとあたりを警戒しながら会社から出てきた。
右、左、ついでに上空、すべてクリア! リムジンは来ていないようだった。
安心して、駅へと歩きだそうとした、その時――
「ふみ!」
――聞き覚えのある、その声に体がビクンと跳ねる。
ゆっくりと、声の方を向くとやっぱりそこにはそいつがいた。
「宗助……!!」
「迎えに来たぞ」
「迎えにって……リムジンは?」
「うむ。目立つからな。お前が嫌がると思って今日は電車で来た」
「電車で? 一人で!?」
「ああ」
「これたんだ……」
宗助の成長に、胸が熱くなる。
……って、子供の成長を見守る母親じゃないんだから!
「SPもつけずに、小野田さんもおいてきて大丈夫なの!?」
「小野田は渋っていたがな。だが、SPを何人も連れて小野田に付き添われていては、意味がないのだ」
「意味がないって……なんで?」
「お前と二人がいいからだ」
「なっ……」
ロボットになって、考えないようにしていた宗助に関するすべてのことが一気によみがえってきて、頭の中がショートした。
何も言えず、ただ固まる。
「帰るぞ、ふみ」
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