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そういうと、宗助が私の手を握って歩き出した。
「ちょっ……ちょっと!」
その手を、振りほどこうと思えばできただろう。
でも……、振りほどけなかった。あまりにも温かくて、優しくて。
なんだ、私どうしちゃったんだろう。
宗助に手を握られたまま、歩いていく。
宗助の背中って、こんなに男らしかっただろうか?
駅に行くまでの道、何も話すことができなかった。
ただ手のひらから伝わる宗助の温度を感じながら、黙って歩いていた。
宗助も、同じように黙ったまま歩いている。
ふと、少し先を歩く宗助の耳が赤くなっているのに気づいた。
もしかして……照れてる?
前に回り込んでまでそれを確認することはできない。
本当に照れているかどうかもわからない。
だけど、もし宗助の顔が真っ赤に染まっていたら……。
想像すると、勝手に口角が上がっていく。
って……何にやにやしてるんだろう、私。
駅までやってきて、改札を通る時に、手が離れた。
温かかった手の平が、外気にふれてひんやりと感じる。
電車に乗っても、お互い口を開くことなく黙っていた。
一たび口を開いてしまえば、きっと私は思い切り狼狽えるだろうし、気にしてないなんてフリできないと思ったからだ。
そして……宗助はどうして黙っているんだろうか?
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