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スーパーから出て、二人並んで家まで歩く。
「ふみ、重いだろう」
そう言って、宗助が私の持っていたスーパーの袋を取った。
「いいよ!」
慌てて、自分の方へ袋を引き寄せる。
「いいから、俺が持つ。こういうのは男の仕事だ」
有無を言わさず、宗助はスーパーの袋を私から引きはがし、持って歩き出した。
「ありがと」
そうお礼を言うと、宗助が頬をカァッと頬を赤くした。
「こ、このぐらいは……当たり前だ」
何この反応。まるで初めてほめられた小学生みたい。
思わず、フフッと笑ってしまった。
自然と歩幅が合う。
今日は横並びの影が、長く伸びて道路に落ちる。
さっきとは違って、なんだか穏やかで、心地よくて……無理に会話なんてしなくても、気まずくなんてなかった。
なんか……こういうのいいな。
そう、自然と思っていた。
アパートまで戻ってきて、さっそく私の部屋で料理開始。
まな板を出したり、手を洗ったりしているのを張り付くように後ろで見ている宗助。
「あのさ、それ、気になるんだけど」
「……気にするな。お前が料理する姿を見ていたい」
「見ていたいっていうけど、こっちは気になって料理できないって!」
「そうか。見ていてはダメか?」
「ダメ!」
「……わかった」
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