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警報
山中の集落では危険が迫っている事などつゆ知らず、
人々がいつもと同じ生活を送っていました。
そこへ桃子姫が、息せき切って駆けこんで来ます。
正午前、彼女は沢へ下りて洗たくをしていました。
すると、いかつい武人達とお供の一行が、
川下から登ってくるのを見かけます。
桃子姫は都で名高い武家の頭領・源頼光と、
器量よしで評判の渡辺綱の顔は見知っていました。
彼らは山あいに立ち上る、飯炊きの煙を目ざしているようです。
野太い声が聞こえてきました。
「鬼が棲むという城は、まだ先か」
彼らは口々に、「早く鬼どもを打ち殺したい」と大声で言いつのります。
それを聞いた桃子姫は、
洗たく物をうち捨て、大急ぎで坂を登ったのでした。
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