哀れなむすめ

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声をかけようとした源頼光は、 彼女が座っている血の池を見て仰天しました。 「目をおおう(むご)たらしさとはこのことよ」 彼女の股と内ももは失われ、 肉どころか骨までもが(あら)わになっていたのです。 「源頼光さまとお見受けいたします。お願いでございます。私を殺して下さい」 なでしこと名乗る女が語るところによりますと、 さきほど手負いの人食い鬼が宙を飛んで来て、 目の前に降り立ちました。 鬼は、「傷を治すために血と肉をよこせ」と言うなり、 彼女を捕らえると肉を喰らい、 傷口から流れる血をすすったのです。 鬼はその最中、 かけつけた渡辺綱に首を切り落とされて絶命しました。 胴体は首がはなれた後、そこら中を走り回っていましたが、 しばらくするとどこかへ消えてしまったそうです。
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