源頼光と四天王

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実際に仁王丸達と遭遇した四天王がおりました。 渡辺綱です。 彼は敵がわずか二人だと知っています。 京から逃げた者たちが住まう、 隠れ里の存在も聞き知っておりました。 物々しい軍勢を率いて出かけたら、 世間の笑い者になると考えましたが、 真実を話しても信じてもらえないでしょう。 主人と朋輩(ほうばい)面子(めんつ)を立てつつ、 いらぬ騒ぎを起こさないよう、 彼らの自尊心をくすぐる言葉を選びました。 「人数が多くてはかえって警戒される。時間もかかる。吾ら精鋭のみで任務を遂行するべきかと存じます」 源頼光は綱の進言を採択します。 明日の陽が昇る前に、 四天王とわずかの供回りを連れて大江山へ向かい、 鬼退治をすると決めました。 一同はただちに解散します。 夕方までに各々が武具や装備を整え、神社仏閣に詣でました。 中納言の姫君が誘拐されて二日目の朝、 昇り初めた陽の光を背に受けて、 頼光の一行は京を発ちました。 彼ら五人の顔は厳しく引き締まっています。 人々を恐れさせ、帝の宸襟(しんきん)を悩ます鬼どもを退治する。 その覚悟が見て取れました。
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