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哀れなむすめ
四半刻ほどのち、源頼光が寺の奥へとやって来ました。
楼門で彼と四天王を相手に激しい闘いをくり広げた、
守天と名のる鬼を捜しているのです。
頼光をはじめとした一騎当千のつわもの四人がかりで、
やっと手傷を負わせることが出来たものの、
鬼は宙に舞ってまんまと逃げおおせたのでした。
廃寺の境内に入った一行は二人の姫君と、
僧坊にいた人々を無事に保護しました。
四天王に後を託した頼光が、
遠くから呼ばわる綱の声を頼りに廟堂へたどり着くと、
そこには凄絶な光景が広がっておりました。
全身に血しぶきを浴びて立つ綱の足元には、
おそろしい形相の鬼の生首が転がっています。
右手に持つ源氏の宝刀・髭切の太刀には、
べっとりと血のりがつき、
その切っ先は、
彼の足元にすわり込む色白の女に向けられておりました。
梳られたぬばたまの長い髪には、一輪の撫子が挿さっています。
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