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源頼光は文武に秀でた武門の頭領です。
おぞましい光景に心のうちを震わせながらも、
顔色一つ変えずに話を聞きました。
「鬼の呪いでしょうか。このような浅ましい姿となっても死ねません。ご慈悲です。どうか私を殺して下さい。父母に見られたくありません」
なでしこがあらためて懇願しますと、
頼光は手を合わせて経文の一節を唱えました。
しばらくすると静かに面を上げ、
「望みを叶えてさし上げるように」と綱に申しつけ、
再び経文を唱えます。
なでしこも手を合わせてこうべを垂れるのでした。
綱が髭切の太刀をふり下ろすと、首が地面を転がりました。
頼光の郎党が拾い上げ、水ですすぎ、清らかな布で包みます。
彼女はおだやかな表情で目を閉じておりました。
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