哀れなむすめ

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人食い鬼を退治して、 さらわれた人々を取り戻した源頼光と四天王は、 翌日の昼に京へ戻りました。 すぐに姫君たちを連れて、内裏に参上します。 御前に進み出た頼光が、声を張り上げました。 「人食い鬼を一匹、退治してまいりました」 鬼の城などはどこにもなく、 廃寺に住み着いた鬼は一匹でしたと、 飾り立てずに報告します。 それでも帝の覚えめでたく、 山と積まれた金銀財宝が下賜(かし)されました。 居並ぶ人々は、「さすが源氏の頭領よ」と口々に称賛します。 主人の供で宮中に上った渡辺綱は、 (えり)に撫子の花を挿しておりました。 なでしこが髪に挿してあったのを請い受けたのです。 公家達は彼の武勇を口々に誉めそやしますが、 綱の心はそこにあらず、 昨日のことを思い返します。 仁王丸となでしこは無事に生き延びているのだろうかと、 遠く因幡の国へと思いを馳せるのでした。
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