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なでしこの花
昨日の昼すぎ、仁王丸が綱と対決している時のことです。
楼門では守天が4人の武人を相手に、
思わぬ苦戦をしていました。
源頼光の太刀・蜘蛛切丸が深く内ももをえぐります。
さすがの鬼神も、苦痛で顔をゆがめました。
つまらぬ役を引き受けたものよと思っていると、
仁王丸の身に危害が加えられた感覚が伝わって来ました。
鬼は急いで楼門の上に飛び乗ると、
屋根をはがして敵に投げつけます。
立ち昇るほこりがおさまった時、
鬼神の姿はどこにもありませんでした。
守天は宙を飛び、廟堂の前に降り立ちます。
仁王丸の左腕は手首から先が失われ、
血がしたたり落ちておりました。
彼は血止めをしようとする渡辺綱を、
「無用だ」と右手で押しのけています。
「仁王丸よ、わしの主人よ。顔色が悪いぞ、真っ青だぞ。左手はどこへやった?血が流れておるぞ、だれが切った」
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