隠れ里

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桃子姫と公達は僧坊で暮らし始めます。 ひと月も経たぬうち、京の雑色(ぞうしき)や女官、下司(げし)が寺を訪れるようになりました。 ここへ来れば鬼神の加護で成らぬ恋も叶う、 そんなうわさ話が流れているのです。 気が付けば、人数は60を超えていました。 半数は京から逃れて来たあぶれ者です。 仁王丸はいつしか「頭領」と呼ばれるようになりました。 年が若いのにしっかり者のなでしこと共に、 小さな集落をまとめております。 百姓や下司は土を耕して菜を育て、 日当りの良い土地に穀物をまきました。 雑色は建物を修繕したり、 道具を作り出したりと忙しく働きます。 山間に打ち捨てられた廃寺での暮らしは、 なでしこが来た頃と比べて驚くほど良くなりました。
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