起 歪む悪癖

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指先から腕を伝い血が滴る。 またやってしまった。今年で二度目の殺人だ。 人の死を、それも自ら命を奪う行為は、いずれは死にゆく自分の未来が垣間見れてしまい切ない気持ちが残る。 しかしこの気持ちも俺にとっては心地のよい感情のひとつだった。 切り刻まれた死体をかき集め、火をつける。燃えてはいけないものが燃えてしまったような焦げ臭さが辺りに立ち込める。 死者に向けての最後の弔い、この日の為にあらかじめ掘っておいた墓に、灰へと変化する死体を埋葬する。 それが終わると俺は薄暗くなった森をあとにした。ここは立ち入り禁止の森の奥地。ただでさえ人気の無い田舎の村の、さらに人気の無い森の中だ。 発見されることはまず無いだろう。 それにもう一つ。 俺が選んだ人間は、その人がどこで死のうが騒がれることもない後腐れの無い人間ばかりだ。 俺は定期的にこの小さな村近隣で標的を定め、また新たな生け贄を探すのであった。 俺はこれを露見してはいけない悪癖だと自負している。 しかし一向にやめようと思えない。 それどころか最近ではもっと恐ろしい事実に気づいてしまった。 自分と標的の距離が近ければ近いほど、つまり深い仲でいればいるほどそのモノを壊し たときの快感が増幅するというものだ。
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