転 交差する二人

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近所に川と川沿いにある林を見つけた。しかし死体を運ぶには困難な場所に思える。そうしてもうひとつ厄介なことは、和哉自身あまり外に出てこないということだ。休日を使ってまで和哉の一日の行動パターンを見ていたが、近くのスーパーへの買い出し、あとは職場先やコンビニエンスストアとの往復だ。  和哉の職業は警備員なのだが、実際は和哉が建物の前に立って時が過ぎるのを待っているような感じに思えた。ただボーッと同じ景色を眺めているのだ。そうして日が暮れてくると同時に帰宅を始め、和哉はまた家に帰ってくるのだ。帰宅道に寄り道するところと言えばコンビニエンスストアぐらいだ。酒を飲む意外の面では、意外と自分の生活に似ている箇所があるのかもしれない。しかしやはりその酒というものが大半を占めていて、一人で住む家から不気味なことに大きな笑い声が聞こえてきたりもした。夜は大抵酔っているようだ。そこで俺はそこに目をつけた。本当はもっと欲求を満たす方法をとりたかったが、リスクを犯したくないのだ。うまく本人を出し抜いて、楽に死なせてやる。 本来俺が殺人を行う趣旨とはずれていたものの、このような人間を殺す行為はやはり衝動を一時的にでも和らげるものがある。
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