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「旅行ですか。…いいかも知れませんね。行きましょう!二人の方が気が楽です。」
思った通り、断られることはなかった。こうして俺たちは共に遠出することになったのだが、旅行先を決める際に二人の性格上繁華街に足を運ぶことはなるべく避けた。田舎から田舎へと言えばその通りだが、結局有名でもないが一応旅行スポットとして成り立っている海の付近へ向かうことにした。今までに使わずにいた有給をお互いに活用し、一週間近い連休を作った。珍しく有給申請をした俺に対して上司が訳を探ることもなく難なく休みをもらえたことに、もしかしたら自分が仕事をしなくてもこの地域は上手く回っていくのではないだろうかと疑ったが、休みをもらえたことに違いはないので素直に上司には頭を下げておいた。そうして俺と田中は短い旅に出て、この地を後にするのだった。
「中島さん。以前疲れていると言ってましたよね。もしかしたら本当にそうだったのかもしれません。お金のために、毎日毎日働きすぎですよ。お金なんて概念なかったらいいのに。」
最近になって田中は非現実的なことを言い始めるようになっている。日々の苦痛からの逃避なのだろうが、俺はこれを好機だと感じた。田中がこの状態にある以上、慎重に言動を選べば田中は俺を信用しきるだろう。当然心の距離も近づく。未来を予想して、俺は最高な形での目的達成を期待していた。
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