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僕の返事はもう決まっていた。
この町をでる。未だ見たことのない外の世界へ。
つまりこれがこの町で過ごす最後の時間だ。ゆっくりと息を吸い僕は言う。
「僕はこの町をでるよ。外の世界を見に行く。」
その言葉を聞いた町長はゆっくりと笑顔を浮かべた。
「そうだろうと思ったよ。お前さんが見張り台から海を見る目は希望に満ち満ちておった。」
そんな町長の言葉を皮切りに回りの大人たちも笑みを浮かべる。
受け入れて貰えた。その安堵が胸を満たす。もし恩知らずと皆から言われたらどううしよう。そんなことを考えていた自分が恥ずかしくなった。
「セツよ。では明日朝この町をでるのじゃな。準備はもう出来ておるか?」
「うん。今日防寒着やテントをまとめたよ。」
「外の世界はこことは違い厳しい環境じゃ。誰も頼るものもなく、誰も助けてはくれない。自ら考え生きる覚悟はできておるか?」
「きっと大丈夫だよ。ツララとならそんな気がするんだ。」
「駄目じゃ!」
町長が声を張り上げる。
ぴたりと周りの喧騒と笑みが止んだ。、皆の視線が町長に集まる。
「ツララ・・・。あの銀髪の少女のことか。」
村長が強張った声で僕に問いかける。
「・・・そうだけど。僕何か変な事を言ったかな。」
僕の質問は宙に消える。町長同様周りの大人たちも眉間に深い皺を浮かべる。
「・・・ねえ。一体どうし・・「セツよ。」
僕の言葉を遮り村長は僕に言う。
「お前があの少女と共に旅をするというのならば言わねばならぬ事がある。」
そういうと町長は上着をまくり上げ胸を指さす。そこには見慣れた鉄の鉄球と二本の管がある。
「このわしらにつけられた鉄の枷とあの白鯨の少女についてじゃ。そしてあの少女と共に生きていくのは無理じゃ。」
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