消えた想い

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あれから数ヶ月… アナトとの生活が自然になってしまった。 カナンの村は海と山々に囲まれた美しい所だ。 基本的には港町で、海からの恵みをいただきながら活気づいているのだが、周りの山々からの木の実や果実、鹿や猪などの売買も盛んな所だ。 中でも遠くに聳える山々の中で一際大きく、神々しい山がサフォンと呼ばれる神々が宿る神聖な所らしい。 僕としては、のどかで心休まるここが大好きだ… そんな村でアナトは暮らしている。 彼女は狩の名手だ。 弓1つで、どんな大きい獲物も狩って、それを村の市場に持って行って生活をしている。 元々僕の記憶が戻るまでとの約束で、手伝いをしながら泊めてもらっているのだが、僕には弓のセンスが無いらしく… もっぱら運搬専門と化している。 「バアルは今日も獲物に逃げられたわね!」 とアナトが、 「ふふん!」 と自分が仕留めた大きな鹿を見せびらかす。 どうも僕は剣の方が使い易い。 「弓はやっぱり苦手だよ!」 「剣なら自身あるんだけどなぁ!!」 自分でも清々しい位の負け惜しみを言ってみたが… 「はいはい」 「次は期待してるよ!頑張ってね!!!」 と逆にアナトに窘められてしまった。 確かに剣を使うのは、僕には合っているのだと思うのだが… 剣を持つと必ず… コレデハナイ… オモイダセ… オモイダセ…… と頭の中で声が聞こえる。 多分何かの錯覚だと思うので、心配を掛けないように、アナトには内緒にしている。
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