消えた想い

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村に着いて、今日の獲物を市場に出す。 「ようアナト!バアル! 今帰ったのか!」 「なんだぁ?バアルは相変わらず、運搬係か?」 日頃世話になっているダゴンが、今日も真っ先に声を掛けてくれた。 「うん、僕にはアナトみたいな弓の才能は無いからね… 大体…獲物に対する距離とは別に、弓を引く力加減に加えて、風向きも計算しないといけない訳だし…やっぱり僕には弓より剣の方が…ブツブツブツブツ…」 「かぁ~っっ! なに難しい事言ってるのかねぇ!!!男なら黙って結果を出しな!!!」 豪快に笑いながら、僕の背中をバン、バン!と勢いよく叩くのが、恒例になってしまっている。 「ところでよぉ~…アナトとは、どうなんだい?? さっさと嫁にしちまえよ!顔良し! 気立ても良し! オマケに胸もデカくてスタイルも良し! 何をチンタラしてるのかねぇ~!!!」 「グズグズしてると他の野郎に取られて…ぐふぅ!!!」 「なっ!何言ってるのよ!ダゴンったらぁ~!!!」 その途端、顔中真っ赤にしたアナトが、近くにあった棍棒を振り回し暴れていた…少なくとも5回はダゴンにヒットしていたな… やばい! 口から魂が抜け出て来てるんですけど… 「ホラ!ホラ!!、早く今日の分、買い取りなさいよ!!!」 と魂の抜け掛けたダゴンの襟元を掴んで、ガシガシ揺さぶるアナトがそこに居た。 …この人には逆らわないでおこう 多分、僕の生存本能がそう告げた。 やっと意識を取り戻し、ほぼアナトの言い値で今日の獲物を買わされたダゴンが、 「仕方ねぇなぁ~!」 と、まるで父親みたいに軽く微笑んだ。
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