第1章

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話を終わらせてほしいのに、山口先生の口は私の秘密の扉を抉じ開けようとする。 「モデルなんですがね。」 「そんなことどうでもいいですよ。お酒が進んでないですよ。次の飲み物は何にします?」 はぐらかそうとする私を、じっと見つめる山口先生の視線から逃げるようにメニューを顔の前に広げた。 「えー、モデルですか?浅井先生に似た人いましたっけ?」 「見た目は違うけど、よく見るとパーツの配列や輪郭なんかは瓜二つ。 僕には同一人物としか思えない。」 「誰なんですか?焦れったいから教えてください。」 「レイですよ。」 「え?ウソー?全然似てないですよ。」 「女性はメイクでいくらでも化けられるでしょ?」 「そうなの?浅井さん。」 そんなことを聞かれてそうです何て言えない。 黙ってファンから姿を消した私が、今さらレイと名乗れない。どこからバレるかわからないのだから…。
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