第1章

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不安になりながらも 「じゃ、お邪魔しますか。」 なんて山口先生までその気になって 「ど、どうぞ。」 と言うしかなかった。 エレベーターの前で↑ボタンを押すと、2階に止まっていたゴンドラが降りてきた。 エレベーターの網目の入ったガラス戸から中に複数人がいるのが見える。 扉が開き、現れたのは背の高い緑のジャージ姿の高村くんに腕を絡める美しい人。その顔は上を見上げていて、私たちのことは見えてないようだ。 高村くんが抱き寄せるように女性を引き寄せるとその人は幸せそうに頭を寄せる。 胸がズキンと痛む。 そうだよね、高村くんほどの素敵な人を女性が放っておくわけがない 私たちを避けるように出てきて こちらを見ることなく二人寄り添うように外に消えていった。 灯りが点いていたのは二人っきりの時間を過ごしていたんだろう。 1ヶ月前、部屋で二人っきりになったのに、触れることはなかった。 淋しかった 触れたかった けれど、彼の気持ちが分からず、素直な気持ちを1つも見せられなかった。
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