第1章

17/33
前へ
/33ページ
次へ
お湯をゆっくり注ぎながら、気持ちは落ちていた。 彼女がいるんなら放っておいて欲しかった 誤解したままは悲しいけれど、希望は持たなかったのに… 潤んでくる目をぐっと閉じて涙をこらえた。 コーヒーの入ったマグカップ二つとスティックシュガーとミルクとおやつに買っておいたシュガーラスクをお皿に入れ、お盆に乗せて部屋に戻っていった。 「こんなものしかなくて…」 ガラステーブルにコーヒーとラスクを置いて、フローリングに向い合わせで座っている山口先生と高橋先生の横に座った。 「ホントに何もないのね。」 呆れたように笑う高橋先生。彼女らしい反応に苦笑いすると、 「スッキリしていて気持ちいいですね。僕はこういう部屋、好きですよ。」 相変わらず優しい山口先生にホッとした気持ちになる。 「ありがとうございます。入って間がないし、ショッピングとかする余裕がないから物が増えないだけです。そのうちガラクタが増えていくと思います。」 話していれば気が紛れる。 二人がいてくれて良かった 「浅井先生は優人のファンなんですのね。」 壁のポスターを見ながら高橋先生が聞いてくる。 「え、あ、ええ、まあ。」 そう、私は1ファンだ 望みなんてとうに捨てたんだ 高村くんに好きな人がいるなら喜ばしいことなんだ 「私も優人ファンですのよ。彼を嫌いな人はいませんよね。 浅井先生は男に無関心みたいだけど、そういうところは普通なんですね。」 「そうですね、男嫌いじゃないことがわかってちょっと安心しました。」
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加