第1章

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ガラガラガラ 息を切らしながら引き戸を開けると、店員が怪訝そうな顔でこちらを見た。 「ハア、ハア…高橋の予約の…ハア、ハア 席はどこですか?」 「そちらの二つ目の個室席です。」 「分かりました。」 時計を見ると2分前。呼吸を整えるために深呼吸を2回して部屋に向かった。 「遅くなってごめんなさい。」 「ああ、浅井さん、お疲れ様です。そちらにどうぞ。」 四人席の高橋先生の隣、山口先生の斜め前に座った。 「ギリギリセーフでしたね、浅井先生。」 イタズラっぽい目を向ける高橋先生。 「次の授業の準備をしていて遅くなっちゃいました。要領が悪くてごめんなさい。」 「謝ることないですよ、素晴らしいことです。浅井先生は責任感が強いのですね。 飲み物を頼みましょうか? 僕はビール、皆さん何にします」 優しそうな山口先生の笑顔に緊張が少しほぐれた。 「私もビール。」 「じゃ、私も最初はビールで…」 山口先生が店員にビールとおつまみの注文を入れてくれた。 「さっきの話ですけど、私も直ぐにしてますけど、ポイントだけやれば時間はそうはかからないですよ。」 「高橋先生みたいに手際よく出来ないんですよね。 先生としてまだまだです。」 これは本音だ。次の授業に必要なものを考えるのに時間がかかってしまう。もっとテンポよく出きればいいのにと、いつも思う。
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