1章 鉄の街

3/7
前へ
/7ページ
次へ
朝日が街をゆっくりと染め上げる頃、僕の1日はスタートする。 まるで運動会のように街を走り回り、笑顔を振りまく。 「おはようございます!」 そう言って僕は相手の挨拶も聞かずに赤やシルバーの各家のポストに新聞を投かんする。 僕の朝は忙しく、空を見ている暇さえ、とてもじゃないがもったいなく感じてしまう。 僕は新聞配達をしながら、医療の勉強をしている。 将来は有名な医者になることが目標だ。 まだ6歳の僕には遠い未来の話だが、勉強はきっちりと進んでいる。 このあとも先生のところで授業があるのだ。 僕はそれが楽しくてしょうがない。 夢に近づいていると思うと、嬉しくて嬉しくて、早く大人になりたいと願ってしまうのだ。 僕の街は戦争をしている。 それはいけないことだと僕も思う。 ただしそのおかげで6歳の僕にも医療の勉強が出来ているのだ。 戦争で医者がどんどん死んでいっている。 いわゆる医者不足なのだ。 僕はそれが嬉しくてしょうがない。 医者が減れば、医者を増やそうと街が僕に勉強させてくれる。 「人は死んじゃえ!医者はもっと死んじゃえ!」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加