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走り回っていると、突然に空襲の警報がなった。
街は悲鳴に包まれ、鉄の雨が降り注ぐ。
僕は死ぬわけにはいかない。
僕は医者になるのだ。
空から爆弾を落としてくる戦闘機を見て僕はそれに憎悪する。
「僕の勉強の邪魔をするな!お前ら悪魔どもに負けることは絶対にないぞ!」
爆撃と悲鳴の中で叫ぶ僕の声など簡単にかき消されてしまう。
憎しみがどんどん湧いてくる。
彼らに僕は両親を奪われた。通っていた学校を燃やされた。
今度は夢を奪いに来たのだ。
きっと彼らの中には悪魔が取り付いているに違いない。
僕はそんな彼らさえ治せるような医者になる。
今、邪魔されるのはとても、とても困るのだ。
「お前らの悪魔も治してやるから、待ってろよぉ!」
僕の中にある最大限の声で叫んでも、彼らからの答えは帰って来ることはなかった。
「た…すけて、たすけ」
僕の足をぎゅっと誰が掴む。
それは女性だった。
顔中が血だらけで、片足が無くなっていた。
出血が酷そうで助かる見込みはないだろうと僕は思った。
それでも彼女は必死に僕の足を掴んでは離さない。
僕はそれが痛くて痛くて。
それでも僕は我慢して彼女に囁く。
「大丈夫ですよ。大丈夫です。助かりますよ!だから手を離してください。今、医療キットを持ってきますから!」
僕はそう言って笑って見せた。
女性は安心したのか、ありがとうと呟くとゆっくりと手を離した。
さてさて医療キット、医療キット。
僕は周りを見渡して何かそれっぽいものはないかと探す。
「うぅ…あぁ…。」
女性のうめき声が癇に障る。
うるさい。まったくどうして静かに待ってられないのか。
医者の僕は理解できない。
「あったあった。まぁこれでいいだろ。」
僕は爆撃で壊れた家のレンガを持って彼女の場所まで戻った。
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