1章 鉄の街

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走り回っていると、突然に空襲の警報がなった。 街は悲鳴に包まれ、鉄の雨が降り注ぐ。 僕は死ぬわけにはいかない。 僕は医者になるのだ。 空から爆弾を落としてくる戦闘機を見て僕はそれに憎悪する。 「僕の勉強の邪魔をするな!お前ら悪魔どもに負けることは絶対にないぞ!」 爆撃と悲鳴の中で叫ぶ僕の声など簡単にかき消されてしまう。 憎しみがどんどん湧いてくる。 彼らに僕は両親を奪われた。通っていた学校を燃やされた。 今度は夢を奪いに来たのだ。 きっと彼らの中には悪魔が取り付いているに違いない。 僕はそんな彼らさえ治せるような医者になる。 今、邪魔されるのはとても、とても困るのだ。 「お前らの悪魔も治してやるから、待ってろよぉ!」 僕の中にある最大限の声で叫んでも、彼らからの答えは帰って来ることはなかった。 「た…すけて、たすけ」 僕の足をぎゅっと誰が掴む。 それは女性だった。 顔中が血だらけで、片足が無くなっていた。 出血が酷そうで助かる見込みはないだろうと僕は思った。 それでも彼女は必死に僕の足を掴んでは離さない。 僕はそれが痛くて痛くて。 それでも僕は我慢して彼女に囁く。 「大丈夫ですよ。大丈夫です。助かりますよ!だから手を離してください。今、医療キットを持ってきますから!」 僕はそう言って笑って見せた。 女性は安心したのか、ありがとうと呟くとゆっくりと手を離した。 さてさて医療キット、医療キット。 僕は周りを見渡して何かそれっぽいものはないかと探す。 「うぅ…あぁ…。」 女性のうめき声が癇に障る。 うるさい。まったくどうして静かに待ってられないのか。 医者の僕は理解できない。 「あったあった。まぁこれでいいだろ。」 僕は爆撃で壊れた家のレンガを持って彼女の場所まで戻った。
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