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「ありがとう…もう目が見えなくて」
女性は僕の方を向いてはいなかった。
ダメだなこれは。使えそうにない。
まぁ、片足がないから戦場でも足でまといになるだろうな。
僕が治す価値もない。
「治療、始めますね。」
ぶっきらぼうに僕は言う。
レンガを握りやすく持ち直して、僕は彼女の頭めがけて思いっきり振り下ろした。
何度も何度も。
悲鳴はなかった。出す気力もないのだろう。
うめき声が止む頃には、レンガもボロボロに壊れていた。
「あぁっ、まったく、汚いなぁ」
顔中に返り血やら肉片やらで汚れてしまった。
女性はもうすでに人ではなく物に変わっている。
人だった物に。
僕は怒りを込めて彼女の頭を蹴り飛ばした。
「こんな格好じゃ勉強会にいけないじゃないか。」
顔を拭って、周りを見ると向こうに人だかりができていた。
大きな布も見えた。
「あれは…。パラシュートかな…」
考えるより先に僕は走り出していた。
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