月の海は兎の顔

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「緊張するね、風間さん、花崎さん」 三人だけになった時に、鳥野さんが声を掛けながら再び握手を求めて手を差し伸べてきた。 つい先程も沢山の記者の前で固く手を握り合った私達だが、今度はどこか芝居染みた雰囲気も無くしっかりと互いの手を握り合う。 「お願いしますね」 「こちらこそ」 私と違い鳥野さんは三児の母だし、早くに結婚し子をもうけた花崎さんには成人したお子さんが居る。 きっと緊張感と責任感、それに母でありながら一つの夢をしっかりと手にした充足感は私以上に有るだろう。 三人の中では私だけが独身だから、宇宙から戻って来たらモテるわよとからかわれた。 果たしてその辺はどうなのだろう。 中学の頃から努力を怠らず、自分の夢と目標の為に邁進して来た私には近寄りがたい雰囲気があったか、それとも自分より頭の良い女は鼻に着くのか男性にモテた試しが無い。 二人とも理解ある旦那さんや子供を得ているのは羨ましいと素直に思うけれど、私はそれらの存在を自ら積極的に手にする気にはなれないでいた。 むしろ、避けて来たと言える。 夢を応援してくれる家族や友達は得ていたけれど、同時に心配する声も多く聞いていた。 「ねえ、本当に後悔しない」 「子供を作る事が最高の喜びと言う気は無いのよ」 その言葉を口にした時点で同じでしょと思う気持ちは飲み込んで、満面の笑みで答えていた。 「自分が子供を産む姿が想像出来ないの。それにお姉ちゃんがもう二人産んでいるしね。甥っ子姪っ子には有名な叔母さんになって上げるわ」
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