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死者を甦らせる方法は二つ有る。
クローンを作るか、殺人を犯した加害者の個性を奪い、その肉体に死者を甦らせるか。
どちらも一長一短の選択肢。
クローンは生前の記憶を引き継げないし、何より赤ん坊以前からやり直す事になる。
でも、嫌な記憶を忘れ人生をやり直せると受け入れられた。
罪人の肉体に甦らせるには、被害者の頭部が無事で有る事が重要で記憶は引き継げる。
保存しておいた頭部の移植に、その他の外科的手術と心身のリハビリが必要なだけだし、社会復帰もクローンよりは早い。
ただ、その心の容れ物は他人のものだ。
恐らく甦らされた者は皆、憂鬱な気持ちを引き摺っているのではないかと私は推測する。
幾ら厳重に秘密は護られていても、些細な手違いでそれは暴かれるのだから。
私の場合はアルバムだった。
パソコンのファイルに有った画像が、私に私と言う存在の真実を告げた。
五歳の私と、二歳の姉。
別のファイルに保存された事件のあらましと、父母の心情の吐露とクローンである私への気持ち、オリジナルへの謝罪の言葉。
身を引き千切られそうな文面と、突き付けられた真実に私は震えた。
誰にも言えないとも瞬時に悟った。
自分のパソコンの調子が悪いからと、こっそり忍び込んで使わせて貰った父のパソコンから知った事実を、私は知らない振りをして過ごして来たのだ。
これまでも、この先も問えないし聞けない。
反抗期であっても、無断で父のパソコンを覗いた後ろめたさも有ったし、私がオリジナルであるならば妹である筈の姉の事は大好きだったから。
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