船酔いは逃げれない

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「付き合ってるときは楽しかった。もちろん、贅沢もさせてくれたよ。でもそういうのはどうでもよくて、毎日がジェットコースターみたいなの。すごく大きな仕事が取れたときはこの世は自分のものだくらいにはしゃぐし、銀行から目いっぱいお金を借りたときは、おびえて『手だけにぎっててほしい』って言うし。ほんと、太平洋の荒波みたい」 「でも別れた。ってことは向こうの奥さんにばれたの?」 「そういうこと。笑っちゃうくらい、ベタな怒鳴られ方したよ。ホテルのロビーでいきなりね。この人、なんでこんな女の人と結婚したんだろうって思った。けた違いのブス」 思わず笑ってしまった。早紀はいつも同性に厳しい。 「でもね、向こうには子供もいたし、こっちは二十歳になりたてくらいで、離婚してもらって私と結婚なんて、思いもしてなかったし。だから黙って引いた」 「その社長は?」 「未練たっぷりだったよ。ユキオと付き合いだした頃もずっと連絡してきてた。でももう私は一気に冷めてたもん。あのブスと仲良くやってろって」
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