30時間の闘い

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 僕の住んでいる地域では年に1度、海沿いを歩くチャリティーが開催される。この歩く距離だが、100キロだ。制限時間は30時間。土曜日の朝に歩き始め、翌日の夕方頃にゴールへとたどり着く。  不眠不休と言うわけではないが、どちらも程々にしなければならない。歩くのを辞めると、恐ろしいほどに体が固まってしまうのだ。  僕がチャレンジした日は生憎天候に恵まれず、初日の朝から雨が降っていた。夜には本降りになり、数メートル先が霞むほど。  しかも、15キロから30キロの地点は海から少し離れて山越えとなる。山を越えた頃には徐々に足取りも重く感じ始めるのだ。  50キロを越えたところで水分補給のためにコンビニによるが、財布を出すために手を動かすことすら難しく感じられた。  約10キロ毎にチェックポイントが用意されていて、それぞれタイムリミットも設定されている。結局、僕は61キロ地点のチェックポイントにて尻切に合い、ゴールまでバスで強制送還された。  このチャリティーだが、毎年2千人から3千人の規模で行われる。スタートから数時間は大名行列さながらの大所帯だったのが、信号に少しずつ細かく切られ、個人の歩行ペースも如実に顕れ、僕がリタイアに追い込まれた深夜1時過ぎには周りにほとんど誰も居なかった。  翌日、全身が筋肉痛によりベッドから起きられない体験もした。ただ歩くという事が、こんなに辛いのだと、初めて知る。参加する前は100キロとはいえ、歩くだけだろうと思っていたのが見事に打ちのめされた形だ。
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