30時間の闘い

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 さて、明け方のお味噌汁の話に戻ろう。これは、僕が参加したチャリティーからさらに2年後の事だ。  場所は87キロのチェックポイントの少し手前。ここで参加者を応援するために集まったメンバーで炊き出しを行っていたのだ。  大勢の方が通っていった。皆、文字通り死にそうな表情で現れる。ほとんど一睡もしていないはずだ。それは、そうなるのが当たり前だろう。  しかし、味噌汁を飲んだ人達は、5人組の男性のように皆、笑顔になった。頑張ります! 絶対にゴールしてみせます! そう言って早々に去って行くのだ。歩みを止めてはならない。瞬く間に筋肉は冷えて固まり、歩きだすのが困難になるからだ。  100キロという長い道のりを歩くという行為は、己と向き合う大切な時間になる。魂の修行だ。  歩いている最中に何度も何度もリタイアという悪魔の言葉が過ぎる。それでも歩き続けた者だけがゴールに辿り着くことが出来るのだ。  途中、見ず知らずの同じ歩いている仲間と励まし合うこともある。追い越していく車から子供が「頑張れー!」と叫んでくれることもある。僕らがやったように、参加者を応援するためのテントや炊き出しなんかもある。多くの人たちに支えられながらゴールへと向かっていく様は、まさに目標に向かって頑張る人々のプロセスそのものではないだろうか。  今年もまた、4カ月後に100キロウォークは開催される。4年前のリベンジが出来るなら、是非ともしたいものだ。  ゴールした先に見える景色はいったいどんな景色なのだろう?
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