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莉奈の写真を撮る喜びを溢れ出すかのように ウキウキ・いそいそと会場に向かった聡兄は 来賓客テント近くの一番いい場所を陣取って ビデオカメラをセットし何時でも撮れるようにカメラを構えていた。 聡兄が今朝、莉奈に僕たちが来ることをばらしていたなんて 知らない僕たちは お昼のお弁当の時に驚かそうと響也に部室棟の鍵 (学校には内緒で作った代々受け継がれている鍵)を借りて そこからバレないように見ていた。 何処にいても莉奈なら直ぐに見つけられる。 小さい頃によくしていたような髪を高い位置で二つに結び 真剣な顔になったり周りの人たちと喜び合ったり 仲間に声援を送ったりとコロコロと表情を変え 体育祭に一生懸命になっていた。 徒競走で惜しくも一位にはなれなくて悔しそうにしていたけど そんな表情も僕にとっては愛おしい。 「うわぁ、キモッ」 「何だよ!」 「また莉奈見て笑っただろ」 つい声を漏らしてしまった僕を呆れたように言う。 「別にいいだろ、誰が見てるわけじゃないし  …お前しかいないし」 「何時も見せられるこっちの身にもなれよ、まったく」 「あ、響也、活躍してるねー」 「だろ、俺に似て運動神経もいいんだよ」 うんうん、と自慢げに笑みを浮かべ 頭もいいし顔もいいしな、俺ほどじゃないけど、 と言う達也も聡兄ほどとはいかなくても 十分ブラコンだと思う。 本人には、言わないけど。 視線を会場へと戻すと ん?なんだアイツ! 響也が言ってた二人三脚の奴か! 莉奈とくっ付きやがって! いくら競技だからってくっ付き過ぎなんだよ! 肩を組むな!足を結ぶな!  僕でさえまだそんなに莉奈に近づいたことないのに。 体育祭の競技なんてことを忘れて 嫉妬の矢という視線をそいつに向けて嫌というほど放ってやった。 そんな僕に達也が 「怖~」 何て言ったことなんて耳に入らないほど。
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