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僕は小学校入学と同時に引っ越しをした。 それまではタワーマンションに住んでいたけど 引っ越し先は庭もまあまあ広い大きな一軒家だった。 四つ上の姉は友達と離れることに不満だらけ。 私立の学校に通っていれば そんなこと関係なかったかもしれないけど 高校までは公立に行け、それが親の方針だったから 転校は余儀なくされた。 前の家の周りには子供が少なく 小学校は一クラスしかなかったけど 引っ越し先の学校は複数クラスで 僕も幼稚園の時の友達と別れてしまうのが寂しかったけど 今までよりももっと多くの人と同級生になれるかと思うと 少しだけワクワクしていた。 転校するまで不満ばかり言っていた姉は 社交的な性格もあってすぐに友達を作って遊んでいた。 その友達の中に彼女のお姉さんがいた。 僕は入学式の日、 今までに会ったことのない子供の人数に圧倒されていた。 複数の幼稚園と保育園から来た皆は その時の友達となのかグループがあって 僕はその中に入っていけなくなっていた。 そんな僕に声をかけてくれる子が一人いた。 「君、名前なんて言うの?  僕、高橋達也。一緒に遊ぼう?」 彼とは小学校から大学、会社まで 公私ともに一緒に過ごすこととなる。 もしかしたら親よりも僕のことを分かっているんじゃないかと思う。 彼の存在がなければ、ほんの少しだけ姉の存在がなければ 僕の初恋のキミ 僕の大好きなキミ 僕がただ一人愛するキミに 出会うことはなかっただろう。
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