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「そんな顔すんなよ
もうすぐだろ、体育祭
今年は寛大だよな、聡兄。お前も行っていいなんてな」
「ん、あぁ…」
何時もなら莉奈の体育祭を見に行くなんて絶対許してくれない聡兄が
今年に限って許可してくれた。
暫く会えないことに気を遣ってくれたからだ。
莉奈に会えるのは嬉しいのけど
少し複雑でもある。
学校では莉奈には『響也』とういう彼がいて
二人の仲を知らない人はいない。
学祭の時にそのことを間近で感じ僅かにショックを受けた。
自分から響也に莉奈のことを頼んだ癖に
そう頭では分かっているのに、胸が痛んだ。
莉奈の彼氏としていられる響也に嫉妬したのだ。
全く、我ながら勝手な奴だと思う。
あと、莉奈に好意の目を向ける奴らがいることも気になる。
響也という存在も分かっているから直接近づいては来ないようだけど
どんな神経しているんだ。
僕の莉奈にそんな目を向けるんじゃない!
体操着姿の莉奈をアイツらが見るのかと思うとムカついてくるし
来年から響也がいなくて大丈夫かと心配になってくる。
「何だよ、ニヤけるならまだしも
何でそんな険しい顔してんだよ」
「ん?いや、ちょっと…」
お前の弟に嫉妬してんだよ、とか
他の奴を勝手にムカついている、とか
何でも知っている達也でもこんな気持ちは恥ずかしくて知られたくはない。
「恋する男子は大変だなぁ~」
全く~、と呆れる達也を余所に
僕の胸の内は嬉しさと嫉妬と怒りで渦巻いていた。
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