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「褒めてないよ。大人になってからの『いい子』は、『都合のいい子』とイコールだから」
「わかってます」という言葉は口の中でくぐもった。
だからって、熊澤は今この場にいない。目の前に積まれた仕事は、結局は誰かがやらなければなくならない。そして一番早くて、効率的なのが、私が引き受けることではないのか。
パソコンの画面を半ば睨みつけながら、私はじっとこの場をやり過ごす。
「あずみちゃん、嫌なことあったら、ちゃんと言わなきゃ。怒らなきゃ」
笑おうとした唇は、エアコンの風で乾いて、うまく動かなかった。
ああでも、と芦原さんは続けた。
「あずみちゃんみたいな子が怒るのが、実は一番、
……怖いのかもね」
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