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 結婚式前日。SNSに「今日は美容室と、エステと、ネイル!」と投稿していた桃香は、二十一時を過ぎてから、ようやく私の部屋のインターホンを鳴らした。ブーケの入った紙袋を覗き込んだ桃香は、浴室からの「お風呂が湧きました」というアナウンスをかき消すように、大きく手を叩いて、はしゃいだ声を出した。  バラを中心に、ラナンキュラス、トルコキキョウ。白をベースとしたブーケは、花嫁が身につけると幸せになる『サムシングブルー』を微笑ませて作ってあった。最近のシルクフラワーは作りも精巧なこともあり、遠目から見れば、生花と見紛う出来映えとなっていた。 「ピンク系じゃなくて本当によかったの?」 「うん。リューイチくんが『桃香は水色が似合う』って。お色直しのドレスも人魚姫をイメージした青系なんだよね」  ブーケと、揃いのブートニアと、髪飾り。桃香は次々と手に取りながら、満足そうに頷いては鏡の前で合わせると、にこやかに微笑んだ。  ブーケを持つ左手に輝く光は、否応なしに私の視線を引き寄せる。  そしてそのまま。  息が、静かに止まった。  薬指にはめられた華奢な二連の指輪は、何もかもを裏切っていた。 「桃香、それって」 「あー、これ? ダイヤ小さくない?」  「そうじゃなくて、その下の」
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